久々のアウトドア。
増え切った体重の事は少し横に置いて。
すっかり一般人に戻ってしまった保持力にも目をそむけて。
岩登りに行くことにした。
先週に引き続き、今週末も台風で外に出られなさそうだ。
サオラーという名前の台風らしい。
台風に名前はいるのだろうか。
少しでも愛着をもって迎え討てということだろうか。
仕事も落ち着いたので、平日に有給をもらって、僕の最も苦手とする岩場へ行く事にした。
北山公園。
名を聞くだけで、ぞっとする。
クラシックな課題満載で、スタンス発見力と絶妙なフットワークをこなす精神力が試される修行の地。
足遣い絶望的な僕が、成長するには避けて通れない岩場だ。
二年前コテンパンにされ、ついてしまった最悪なイメージを払拭することが目標だ。
台風あけで、爽やかすぎる秋晴れとともに、気持ちよく8:00に出発。
もう日の出とともにでるモチベーションは失っていた。
現地には10:00頃に着。
半日はキャンプの予定を立てていたので、リミットは15:00。
まずは将棋岩を触ることに決めていた。
うろ覚えの道を進み、なんとかたどり着いた。
まずアップに、将棋入門をさくっとゲット。
そして前回離陸すらできなかった『将棋ノーマル』一級。
今回はなんと。
またも離陸できず(笑)
100万人が磨き上げてきたスタンスに、ゴミ足クライマーが乗れるはずもない。
ましてや僕のオブザべ力では、挑戦することすらおこがましい。
気分転換に『sakaマントル』三級。
こちらは一撃。
マントル力は、まだマシな感じだ。
そして触りたかった課題『スコーミッシュゾンビ』二級を発見。
名前が格好いいので触ると決めていた。
立ったままホールドを確認した印象だと、これはいけるやつだ。
ランディングがかなり悪いが、一撃で落としたら関係ない話だ。
いきなりカメラまで回して取り付く。
え。
う、、、、浮けねぇ。
初手核心ちゃうんかい(笑)
離陸核心。
結局テイクオンできず。
カメラまで回して、取り付いた自分を殴りたい。
ぱっと諦め、パチンコ岩へ。
まず左カンテ沿いを登る『ゼロファイター』七級に挑戦。
これが、悲しいぐらいの激ハマり。
七撃ぐらい撃ったと思う。
出鼻を挫かれ、『かとちゃん』五級には無論惨敗。
とーまさんいるやつや(笑)
素直に移動することにした。
そしてここから事件が始まる。
実は密かに目標を立てていた『初級スラブ』七級。
北山の超有名課題だ。
とーまさんが、連れて行ってくれると言っていた。
その予習というか、抜け駆けというか、あわよくば回収してやろうと思っていた。
そのよこしまな気持ちが、大事件を引き起こすことを、この時の僕は知らない。
パチンコ岩からそのまま下っていった。
特に考えもせず、北へ北へと。
歩いているつもりだった。
そして僕は向かったのだ。
東へ東へと(笑)
気付いた時には、既に密林だった。
一歩一歩踏み出すごとに、背負ったマットが引っ掛かった。
激しい傾斜に抗うように掴んだ木が、根元から腐っている時もあった。
異常なほど強靭なツタにつまづき、様々な裂傷もできた。
道なき道の急傾斜を、300円のクロックスもどきで降りた。
一時間ほどさまよい歩き、少し広い平地に出た。
川がすぐ近くに流れている。
少し川沿いを下ると、看板が出てきた。
ひと安心して、看板を読む。
「ここからハイキングコースになります」
あんまりだ。
誰がクソ重いマット二枚も背負ってハイキングするんや。
川沿いを歩いてみた。
しかし上流も下流も行き止まり。
それでもハイキングはごめんだったので、急斜面を戻ることにした。
この選択が大凶と出る。
斜面は登るのに体力がどれほどあっても足りず、マットが恐ろしく引っ掛かる。
三年連れ添ったマットを捨てて行こうかと悩むほどイライラしていた。
エーキセントリック。
エーキセントリック。
エーキセントリック遭難ボーーイ。
脳内で流れる謎の歌が、イライラに拍車をかけた。
結局広場へ戻り、地獄のハイキングを行くことにした。
かれこれ二時間も遭難していた。
ハイキング道の前に、おばちゃんがいた。
「この道は結構しんどいよ」
あんまりだ。
期待とは真反対の情報を頂いた。
瞑想をしているお姉さんや発声練習をしているおじさんがいた。
マットさえなかったら、退屈しない道中だったと思う。
やっとの思いで13:30ごろに池まで戻れた。
楽しいハイキングだった(棒読み)
ここで、まだ見ぬ『初級スラブ』にボコボコにされた日には、きっとメンタルがもたない。
昔敗退した『木下フェース』に行くことにした。
結局14:30ぐらいまでで、木下フェースを三本とも回収できた。
ついでに、バーカーヘッドの課題を数本登って終了。
腕や指が疲れるほどではなかったが、足の疲労が尋常じゃなかった。
北山公園を後にし、鴨池公園に向かった。
ことごとく有料キャンプ場は台風で封鎖だったので、誰にも文句の言われない無料キャンプ場にした。
無料の割に、トイレも炊事場も綺麗なところだった。
テントを張れるスペースは、あまりなさげだった。
日が暮れるまでに、さくっとテントとタープを立て、松の木と松ぼっくりを拾った。
地味にペグダウンするタイプのテントは、初めてだったので苦労した。
しなることなく、綺麗に張れるようになりたい。
松の木を、手斧とのこぎりで切っていく。
この木を切る作業が、無心になれてとても楽しい。
キコリー井上は、そのまま焚火の準備にかかった。
こちらも初めての作業だった。
焚火初心者だったので、着火はチャッカマンに甘えた。
火打石での着火は、是非チャレンジしてみたい。
その後、火を育てるのにかなり苦労した。
割り箸を何膳ささげたか分からない(笑)
焚火料理は最高だったが、松の煙がどちらに座ってもなぜかこちらに向かってきた。
数えきれない星の下で、数えきれないほどむせた夜だった。
公園で遭難する。
この貴重な体験が今後の人生に役に立つ事を切に願う。
By キコリー井上